カニは地域によってさまざまな郷土料理がありますが、その中の一つである「がん漬け」をご存知ですか?
有明海沿岸地域で古くから愛されるがん漬けは、小型のカニを丸ごと砕いて作られる塩辛の一種で、独特の風味と食感で地元の珍味として親しまれています。
本記事では、そんながん漬けの特徴について紹介します。
がん漬けの魅力や作り方について詳しく確認していきましょう。
歴史ある郷土料理「がん漬け」とは?
「がん漬け」は、有明海沿岸地域で古くから食べられている郷土料理で、カニを丸ごとすりつぶして作られる塩辛の一種です。
「万葉集」にはがん漬けの作り方について詠まれた歌があるといわれており、地域の歴史や文学にも関わりがある料理だとわかります。
さらに、冷蔵庫のない時代には、塩をたっぷりと加えて作ることで長期間保存していたという点からも歴史を感じさせられる料理です。
材料として使われるカニは地域によって異なり、シオマネキやアリアケガニなどが主に使用されます。
また、作り手によって味や食感に違いがあるのも特徴です。
がん漬けの魅力は?
がん漬けは、カニ独特の風味と塩味が絶妙に調和した豊かな味わいが魅力です。
また、カリッとした食感も特徴的で、一度食べると止まらなくなります。
さらに、地域や作る人によって違った味を楽しめるのも、がん漬けならではといえるでしょう。
調理方法も多様であり、焼酎のつまみにしたり、ご飯の上にのせて食べたりして楽しめます。
味噌汁やパスタに使用することもあり、自分好みにアレンジできるのもがん漬けの魅力の一つです。
がん漬けの作り方
がん漬けを作る際は、以下の手順で行います。
- カニの準備
- 殻ごと砕く
- 調味料と唐辛子を加える
- 発酵させる
それぞれの手順について見ていきましょう。
1.カニの準備
シオマネキやアリアケガニなど、干潟に生息するカニを準備します。
近くに生息していない場合は、サワガニでの代替も可能です。
2.殻ごと砕く
準備したカニを殻ごと砕きます。
粗く砕いて歩脚をそのまま残す方法と、細かく砕いて細かい破片にする方法の二つがあります。
3.調味料と唐辛子を加える
砕いたカニの破片に調味料と唐辛子を加えます。
この工程によって味や辛さが調整されるため、地域や作る人によって異なる味わいが生まれます。
4.発酵させる
カニと調味料が混ざったものを発酵させたら完成です。
がん漬けで使用されるシオマネキとは?
スナガニ科に分類されるシオマネキは、片方のハサミだけが大きく成長する変わった特徴を持っています。
この特徴はオスに限定され、メスのハサミは左右で大きさが変わりません。
主に熱帯・亜熱帯地域の河口付近の海岸に生息しており、砂泥中のプランクトンやデトリタスを食べて生活しています。
個性的な名前の由来は、オスがメスに向けて行う「ウェービング」と呼ばれる求愛行動が、潮を招いているように見れることからその名が付けられました。
がん漬けは、そんなシオマネキを丸ごと砕いて作られます。
がん漬けを手軽に作るならサワガニ
がん漬けはサワガニでも代替できます。
サワガニなら、日本各地の川や沢に生息しており、シオマネキよりも捕獲が容易です。
そのため、自宅で手軽にがん漬けを楽しみたいならサワガニを捕まえて調理に挑戦してみるのもよいでしょう。
生のサワガニは食中毒に注意
がん漬けは塩でつけて熟成させるため、寄生虫の中間宿主となるサワガニを食べても食中毒の心配は少ないとされています。
しかし、念のため食中毒には注意が必要です。
激しい腹痛や嘔吐などの症状が現れたら、早めに病院で診察を受けるようにしましょう。
サワガニの捕まえ方
サワガニは水の綺麗な川や沢に生息しているため、その条件に合う水辺を探してみましょう。
大体は物影に隠れているため、岩や木を退かして捜索すると見つけられます。
見つけたサワガニは、素手での捕獲もできますが、安全に捕まえるなら網を使うのがおすすめです。
2本の網で前後から追い詰めて捕獲しましょう。
また、素手で捕まえる際は、後ろから掴むようにして前から手を出さないことが大切です。
小型のカニですが挟まれると痛いため、捕獲の際は怪我をしないように注意しましょう。
がん漬け以外のカニを使った郷土料理
がん漬け以外にも全国にはさまざまなカニを使った郷土料理が存在します。
北海道の郷土料理「鉄砲汁」、福井県の郷土料理「せいげ」、宮崎県の郷土料理「かに巻き汁」についてそれぞれの特徴や作り方を見ていきましょう。
北海道の郷土料理「鉄砲汁」
鉄砲汁とは、北海道の道東地域で主に食べられる郷土料理で、カニを入れた味噌汁のことです。
古くから根室地方の漁師飯として親しまれてきました。
名前の由来は、カニの脚を箸でつついて食べる様子が鉄砲に弾を詰める様子に似ていることから付けられたとされています。
鉄砲汁で使用される代表的な食材は、根室地方で水揚げされる花咲ガニです。
花咲ガニは「幻のカニ」と呼ばれるほど希少なカニで、現地以外で食べられる機会は多くありません。
花咲ガニはカニと呼ばれていますが、正確にはヤドカリの仲間で、タラバガニに近い種類です。
また、鉄砲汁に使われる食材は花咲ガニがメインですが、北海道で獲れる毛ガニやタラバガニなどもよく利用されています。
鉄砲汁の作り方
カニとお好みの野菜を用意し、旨みを引き立てるために昆布出汁で煮込みます。
煮込んだカニと野菜に味噌を加えて、味付けします。
最後に、豆腐と長ねぎを加えて鉄砲汁の完成です。
カニから出てくる出汁によって、鉄砲汁には豊かな旨味が広がります。
また、使われる野菜によって料理のテイストや旨みが異なるため、家庭によって違った味わいを楽しめるのも鉄砲汁の魅力です。
福井県の郷土料理「せいげ」
せいげは、メスの越前ガニであるセイコガニを使用した福井県の郷土料理です。
南越前町河野地区で古くから食べられている伝統的な料理で、各家庭に独自のレシピがあるとされています。
セイコガニは、背中に子どもを背負っているという意味からその名で呼ばれるようになったとされており、甲羅の外側には外子、内側には内子をつけるのが特徴です。
元々は船上で食べられていた漁師飯として始まり、現在では庶民の味となっています。
ごはんにかけたり、酒の肴にしたりして楽しまれています。
せいげの作り方
ゆでたカニの脚と付け根を折り、土鍋に並べます。
大根おろしをカニの上に乗せて、火にかけ加熱。
煮上がったら味噌を土鍋に入れ、岩のりを加えて完成です。
カニの風味や大根おろしの旨味が溶け込んだ、美味しいせいげを味わってみてください。
宮崎県の郷土料理「かに巻き汁」
かに巻き汁は、宮崎県南部の北郷町で伝統的に食べられる郷土料理です。
かに巻き汁に使われるのは、山太郎ガニと呼ばれるモクズガニで、海で産卵する際を狙って漁をします。
山太郎ガニは、この地域のたんぱく源として貴重視されており、独特の味わいが特徴です。
かに巻き汁の名前の由来は、味噌がカニの旨味を包み込むことから来ています。
秋から冬にかけて漁獲されるため、地元では秋を心待ちにする方も多い逸品です。
かに巻き汁の作り方
山太郎ガニをよく洗った後、甲羅を外してミキサーなどで細かく砕き潰します。
そこに水と味噌を混ぜ加えて、ざるに濾して鍋に入れましょう。
弱火で加熱し、おぼろ豆腐のように固まったら器に入れます。
最後に、おろししょうがやネギなどを加えて完成です。
カニの旨味が凝縮された汁と、柔らかい食感を楽しめます。
家庭でも簡単に作れるため、そうめんやうどんに入れてアレンジするなどして、自分好みに調理してみてはいかがでしょうか。
簡単に作れるおすすめのカニ料理
続いては、がん漬けのように少し手間のかかるカニ料理ではなく、簡単に作れるカニ料理をいくつか紹介します。
ぜひ、カニを使った献立選びの参考にしてみてください。
カニ飯
カニ飯は、カニの旨みたっぷりで香ばしい匂いが魅力です。
熱々でふっくら炊き上がったご飯は、見た目だけでも食欲をそそられるでしょう。
また、おこげの香ばしさも加わり、クセになる味わいです。
残ったカニ身を使って、ぜひカニ飯を楽しんでみてはいかがでしょうか。
カニ鍋
肌寒い夜には、カニ鍋で温まるのがおすすめです。
カニの旨みがしっかり染み込んだ野菜と煮汁が体を芯から温めてくれます。
お酒を飲みながら、家族や友人と鍋を突いてみてはいかがでしょうか。
また、シメに雑炊をすると最後まで美味しくいただけます。
カニしゃぶ
カニしゃぶなら、旨みたっぷりのカニを昆布の優しい出汁にくぐらせることで、口いっぱいにカニの味を楽しめます。
また、しゃぶしゃぶ用のカニを購入することで、簡単に準備できるのも魅力です。
ぜひ、お好みのタレで豪快にいただいてみてください。
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郷土料理「がん漬け」についてのまとめ
今回は、有明海沿岸地域の郷土料理である「がん漬け」について紹介しました。
がん漬けは、小型のカニを丸ごと砕いて作られる塩辛の一種で、作り手によって味や食感に違いがあるのが特徴です。
独特の風味で少しクセがありますが、ご飯やお酒との相性は抜群です。
珍味好きな方は、ぜひがん漬けを試してみてはいかがでしょうか。
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