スナガニ科シオマネキ属に分類されるカニの総称であるシオマネキは、2006年に絶滅危惧II類に指定された、絶滅の危機に瀕しているカニです。
片方だけ成長する大きなハサミが特徴で、そのハサミを使ったウェービングと呼ばれる求愛行動はとてもユニークです。
本記事では、そんなシオマネキの生態や特徴について紹介します。
ぜひ、その変わった生態や特徴について確かめてみてください。
シオマネキとは
シオマネキとは、スナガニ科シオマネキ属に分類されるカニの総称で、甲羅は横長、甲幅は2〜4センチ程度です。
オスは片方のハサミだけが大きくなることが特徴で、成体なら甲羅と同じぐらいまで大きく成長します。
対して、メスのハサミは両方とも小さいため、ハサミを見ればオスとメスの見分けは容易です。
シオマネキのオスは、利き腕のハサミが大きくなるため、右が大きい個体もいれば左が大きい個体も存在しています。
シオマネキの生態
シオマネキのオスは、大きなハサミを振って求愛する「ウェービング」が特徴的な行動です。
この行動を通じて、オスはメスにアピールを行います。
シオマネキのエサは、砂泥の中に含まれるプランクトンやデトリタスです。
エサを食べる際、ハサミを使って砂泥を掴み、砂泥ごと食べることで栄養を摂取しています。
また、歩脚はしっかりとしており、逃げ足が速いのも特徴です。
サギやシギ、カラスなどの天敵が近づいてきた場合は、素早く巣穴に身を隠します。
そのため、人が近づくのも容易ではありません。
シオマネキの名前の由来
オスのハサミを振って行う求愛行動が「潮が満ちるのを招いている」ように見えるとして、その名が付けられました。
中国でも潮を招く者という意味である「招潮子」の名で知られています。
また、英名のフィドラークラブも求愛行動がヴァイオリンを弾いている様に似ていることから名付けられています。
このように特徴的な求愛行動は、さまざまな国で名前の由来となるほど、シオマネキを代表する習性の一つだとわかるでしょう。
2006年に絶滅危惧II類に指定
干潟を主な生息地としているシオマネキは、人間の活動によって、年々その生息域を減少させています。
元々準絶滅危惧に指定されていましたが、2006年に絶滅の危機が増している生物に付けられる「絶滅危惧II類」に引き上げられました。
種を絶滅させてしまわないためにも、人間の対応が求められています。
シオマネキの種類
日本産のシオマネキ類は10種類ほど存在し、その多くは南西諸島や小笠原諸島などに生息しています。
一方で、九州以北では西日本に2種類しか生息していないことが知られています。
続いては、シオマネキのいくつかの種類を紹介します。
ハクセンシオマネキ
ハクセンシオマネキは、甲長が1.2センチ、甲幅が1.8センチ程度の小型のカニで、シオマネキよりも半分ほどの大きさです。
甲羅はほぼ長方形で、シオマネキよりも眼柄の間隔が広いのが特徴です。
神奈川県以西の本州太平洋岸や四国、九州などに分布しており、河口付近の砂浜や転石海岸に生息しています。
オスの求愛行動が白扇を振っている様に見えることがハクセンシオマネキの名前の由来です。
また、その個体は減っており、シオマネキ同様絶滅危惧種にも指定されています。
ヒメシオマネキ
ヒメシオマネキは、スナガニ科に分類されるカニで、甲幅は2センチほどです。
南西諸島から台湾やフィリピン、パラオにまで分布し、岸寄りの干潟に生息しています。
エサは、砂泥に含まれる有機物を砂泥ごと食べて摂取しています。
また、シオマネキ同様、オスのハサミは左右どちらかが大きく成長するのが特徴です。
甲羅やハサミは白いですが、ハサミの下半分はオレンジ色をしている特徴的な見た目をしています。
シオマネキとは異なり、ウェービングはオス同士の縄張り争いに使用され、オスがメスを背中で押す行動が求愛行動として考えられています。
ベニシオマネキ
ベニシオマネキは、スナガニ科に分類されるカニで、甲幅は1.5センチほど、砂や泥に含まれる有機物を食べて生活しています。
名前のとおり、鮮やかな赤色をした甲羅とハサミが特徴です。
しかし、中には赤と紺や紺と水色などさまざまな色をした甲羅を持つ個体もいるため、その体色は個性豊かです。
インド洋や西太平洋の熱帯域に分布しており、日本では南西諸島や小笠原諸島のマングローブ地帯に生息しています。
ルリマダラシオマネキ
ルリマダラシオマネキは、スナガニ科に分類されるカニで、甲幅は2.5センチほどです。
名前のとおり甲羅は鮮やかな水色をしており、青い小さな斑点がついているのも特徴です。
インド洋や西太平洋の熱帯域に分布しており、日本では南西諸島に分布しています。
石のゴロゴロしている砂浜海岸に生息していますが、その個体数はあまり多くありません。
また、ハサミはオレンジ色から朱色と、こちらも鮮やかです。
ヤエヤマシオマネキ
ヤエヤマシオマネキは、スナガニ科に分類されるカニの一種です。
2.5センチほどの甲幅で、甲羅は黒っぽい紺色をしています。
また、オスのハサミの下が赤いことも特徴の一つです。
日本では、沖縄県のマングローブ付近に生息しています。
リュウキュウシオマネキと混同されやすいですが、別種です。
リュウキュウシオマネキ
リュウキュウシオマネキは、スナガニ科に分類されるカニで、主にマングローブ林の下などに生息しています。
成体は茶色い体をしており、ヤエヤマシオマネキと似た特徴を持っています。
そんな、リュウキュウシオマネキとヤエヤマシオマネキの見分け方は眼です。
ヤエヤマシオマネキと比較して、リュウキュウシオマネキの方が、眼の柄の部分が太くて短いのが特徴です。
ほかにも、ハサミに多少の違いがありますが、一目で見分けるのはなかなか難しいでしょう。
シモフリシオマネキ
シモフリシオマネキは、スナガニ科に分類される小型のカニです。
体は全体的に白く、茶色い水玉模様が散在するのが特徴。
脚は焦げ茶色をしており、甲幅は1センチほどです。
マングローブ林の縁などに生息し、主に石垣島以南で確認されています。
シオマネキは食べられる?
シオマネキは食用としても利用されており、九州地方では伝統料理「がん漬け」が珍味として人気です。
がん漬けとは、カニを甲羅ごとすり潰して塩と唐辛子を加えて発酵させる料理で、塩辛の一種とされています。
がん漬けの歴史は古く、現存する日本最古の歌集である万葉集にもがん漬けが登場します。
見た目はどろっとしており、鼻にくる香りが珍味といわれる所以です。
20%以上の塩分で作られており、舌に染みるほど塩気が強いのが特徴です。
そのため、好みの分かれる味ではありますが、好きな方には刺さる一品でしょう。
しかし、自分で作ることの難しさや絶滅危惧種に指定されている背景から、自ら捕獲してがん漬けにするのは控えた方がよいかもしれません。
カニを飼育するために必要なことは?
カニにはたくさんの種類が存在していますが、シオマネキのように可愛らしい見た目や変わった習性を持つカニを自宅で飼育してみたいと考えている方も多いでしょう。
続いては、カニを飼育するために必要なことについて解説していきます。
自然と飼育環境を合わせてあげる
カニが長生きするためには、なるべく自然環境を再現して、ストレスの少ない生活を送らせてあげることが大切です。
陸生のカニなら陸地を、砂に潜る習性のあるカニなら深い砂を用意してあげる必要があります。
また、カニは警戒心が強く身を隠す場所を求める傾向にあるため、カニ専用の隠れ家を作ってあげることも大切です。
カルキ抜きを行う
カニを飼育する水には、必ずカルキ抜きを行いましょう。
カルキ抜きは、水道水をバケツに入れて日の当たるところで半日ほど放置することで行えます。
また、海に棲むカニの場合は、海水を汲むか海水の素を使って海水を用意してあげることが大切です。
脱走に注意する
カニは、水槽を伝って脱走する器用な生き物です。
そのため、水槽には必ず蓋をすることや、フィルターなどの配線にはテープなどで登れない様に加工することが大切です。
また、カニは飼育環境が悪いと、より良い環境を求めて脱走する場合があるため、飼育環境を整えることも忘れてはいけません。
適切な飼育で、カニにとって居心地の良い環境を作ってあげましょう。
エサは適量与える
たくさん食べてほしいからといって、エサを多めに与えることは控えましょう。
エサをたくさん与えるデメリットとして、水質が悪くなりやすい点が挙げられます。
水質が悪くなると、こまめに水換えを行わなければいけないため、お手入れの頻度が上がります。
自らの負担を増やさないためにも、カニのエサは食べる量だけで余分に与えないように注意しましょう。
混泳は基本NG
カニは種類によって共食いをしてしまう習性があるため、基本的には1匹ずつ違う水槽で飼育することが大切です。
しかし、水槽に十分な広さがあったり、各々に隠れ家があって干渉が少なかったりする場合には、混泳もできるかもしれません。
それでも、無防備になりやすい脱皮直後は水槽を入れ替えたり、エサを十分に与えて空腹させないようにしたりと、さまざまなケアは必要になってくるでしょう。
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絶滅危惧種シオマネキについてのまとめ
今回は、絶滅危惧種にも指定されているシオマネキについて紹介しました。
シオマネキは、片方だけ大きなハサミだったり、メスへの特徴的な求愛行動だったりと変わった特徴や習性を持つカニです。
また、シオマネキには複数の種類が存在しており、それぞれに個性があります。
一方で、絶滅危惧種にも指定されており、人間にはその種を守るための活動が必要です。