「購入したカニをお家で解凍したあと、冷蔵庫に入れて保存していたら身が黒く変色してしまった」
このような経験をした方もいるのではないでしょうか。
身が黒くなってしまっていると、腐ってしまったのかと不安になるかと思います。
放置して身が黒く変色してしまったカニは、捨てるしかないのでしょうか。
そこで今回は、身が黒くなってしまったカニは食べることができるのかと、カニが黒くなってしまう原因について紹介していきます。
ほかにも、変色を防ぐ方法についても紹介しているので、ぜひ最後までご覧ください。
カニが黒くなるのは黒変が原因
カニの身や殻が黒く変色するのは、黒変と呼ばれる現象が原因です。
黒変は、カニに多く含まれているタンパク質が酸化することによって引き起こされます。
タンパク質は、酵素で分解されることによってアミノ酸になりますが、その分解されたアミノ酸の中に黒色色素であるメラニンが含まれています。
そのメラニンの元となるチロシンが、カニの体液に含まれている酸化酵素「チロシナーゼ」の作用によって酸化され、メラニン色素となるのです。
そこで作られたメラニン色素が侵食することによって、時間経過と共にカニの身や殻が黒く変色していきます。
この一連の流れで行われる現象が黒変です。
カニが黒変する行為
カニはタンパク質の酸化によって黒変するとわかりましたが、どのような行為をすれば黒変が起こるのでしょうか。
それは、解凍したカニを冷蔵庫もしくは常温で数時間放置した際に起こりやすいとされています。
酵素の活性化を抑えるためには-10度以下で保存する必要があります。
そのため、冷蔵室や常温での放置は酵素の活性化が進み、すぐに黒変が起こってしまうでしょう。
少しだけって思いながら放置していたら…ということも珍しくありません。
続いては、そんなカニの黒変を防ぐ方法について確認していきます。
カニの黒変を防ぐ方法
カニの黒変を防ぐためには、以下のような対策を取る必要があります。
- 解凍してすぐに食べる
- ボイルにする
- 黒変を防ぐ添加物の入ったカニを選ぶ
それぞれ詳しく見ていきましょう。
解凍してすぐ食べる
カニはある一定の温度から酸化が進みます。
そのため、解凍後は時間を置かずに食べるようにすることで、黒変を防ぐことができます。
解凍は少し手間がかかるので、あらかじめ解凍しておき、ご飯の時間になったら調理するという方も少なくないでしょう。
しかし、しっかり冷蔵庫に入れていたとしても黒変は進むので、解凍は調理する際に行うようにします。
それでも解凍から少し時間が空く場合は、冷蔵庫ではなく冷凍庫で保管し、なるべく時間を置かずに食べるようにしましょう。
【黒変を防ぐ】カニの解凍方法
黒変を防ぐためには、流水解凍で一気に解凍しましょう。
常温での自然解凍では、前述したとおり酸化が進んでしまい黒変の原因となります。
流水解凍は、ビニール袋にカニを入れ、水を入れたボウルの中で解凍します。
約30分ほどで解答が完了するので、黒変させずに解凍したい方はこちらの方法を試してみるとよいでしょう。
ボイルにする
加熱することによって酵素の活性化を抑えられるので、ボイルにしてしまうと黒変が起こる可能性は低くなります。
もし、解凍後にカニが余った場合にはボイルにして保存するようにするとよいでしょう。
ボイルの仕方
カニをボイルする際の手順は以下のとおりです。
- 大きめの鍋に水を入れ沸騰させる
- 沸騰したらカニを入れて落とし蓋をする
- 再沸騰後中火で約15分間茹でる
- 茹で上がったカニを水で洗いアクを落とす
鍋に水を張る際は、約3〜4%の塩を入れます。
黒変を防ぐ添加物が入ったカニを選ぶ
カニを販売する業者は、カニの加工時に黒変を防ぐ添加物を使用して酸化を防いでいます。
しかし、業者によっては添加物の使用を最小限にしていたり、そもそも使用していなかったりするケースもあります。
また、その添加物を使用していたとしても完全に黒変を防ぐことは不可能です。
あくまで、黒変するまでの時間が長くなるものと考えておくとよいでしょう。
ちなみに、黒変を防ぐ添加物は食品表示の欄に「PH調整剤」と記載されています。
そのため、カニを購入する際は、食品表示の原材料名にPH調整剤が記載されているかを一度確認してみるとよいでしょう。
黒変したカニは食べても大丈夫?
黒変したカニは、見た目も悪く腐ってしまっているように感じるかもしれません。
しかし、カニは黒変しても旨味や風味が抜けるわけではなく、ただ色が黒く変色するだけです。
そのため、黒変したカニを食べても健康状態はもちろん味や風味に影響はありません。
なので、黒変したからといってその部分を捨ててしまうのではなく、普段通り調理して食べるようにしましょう。
ただし、黒くなったカニから異臭がしたりヌメヌメしたりしている場合は、黒変ではなく単純に腐っている恐れもあります。
常温でかなりの時間放置したなど、心当たりがあって、変色以外に異変を感じた場合は必ず口にしないようにしましょう。
また、身内で食べる分には問題なくてもお客さんに出す場合などは、いくら味に問題がないといっても気が引けますよね。
そのため、今回紹介したカニの黒変を防ぐ方法を用いて、なるべく黒変させずに食べられるようにしてみましょう。
カニによって引き起こされる食中毒
万が一、カニによって体調に異変が感じられたら以下の食中毒を引き起こしている可能性があります。
- ナグビブリオ菌食中毒
- 腸炎ビブリオ菌食中毒
カニの食中毒は適切でない環境下で放置されるなどして、鮮度が落ちてしまったカニを食べることによって引き起こされます。
どのような症状が出るかなど、それぞれの特徴を見ていきましょう。
ナグビブリオ菌食中毒
ナグビブリオ菌のついたカニを食べた場合に起こる食中毒がナグビブリオ菌食中毒です。
症状としては、腹痛や胃痛、激しい下痢が報告されています。
潜伏期間は、5〜12時間で水のような便が出るのが特徴です。
また、胃の弱い方は嘔吐する場合も珍しくありまけん。
腹痛だけでなく、38度以上の高熱が出る場合もあるため、症状が出たらかかりつけ医がいる病院で診てもらうようにしましょう。
腸炎ビブリオ菌食中毒
腸炎ビブリオ菌食中毒は、腸炎ビブリオ菌によって起こされる食中毒です。
症状はナグビブリオ菌食中毒と同様に、腹痛や胃痛、嘔吐、下痢、発熱となっています。
潜伏期間は8時間〜24時間で、高齢者や持病のある方は最悪の場合死に至るケースもある怖い食中毒です。
症状自体は1日程度で回復するとされていますが、程度が重い場合は必ずかかりつけ医のいる病院にかかるようにしましょう。
黒変は予防しても完全には防げない
カニの黒変は、いくら予防しても完全には防げません。
カニの黒変を防ぐ添加物を使っていても、時間が経てば黒変は起こります。
万が一黒変をしてしまっても味は問題ありませんが、せっかく食べるなら見た目も良い状態で食べたいですよね。
カニを黒変をさせない1番の方法は、時間を置かずにすぐ食べることです。
そのため、カニが届いたら新鮮な内にいただくようにしましょう。
カニの保存方法
黒変を防ぐのはもちろん、カニを傷ませないためにもカニの正しい保存方法について確認しておきましょう。
カニの保存方法別の保存期間の目安はこちらです。
常温 | NG |
---|---|
冷蔵 | 1〜2日 |
冷凍 | 2〜3週間 |
カニは生ものですので、必ず冷蔵室か冷凍室に入れ、常温で放置することのないようにしましょう。
また、これは鮮度をあまり落とさず安心して食べられる目安なので、黒変を起こさない目安ではありません。
ちゃんと冷蔵室に入れていたとしても、数時間で黒変してしまうケースもあるため、解凍後はなるべくすぐに食べてしまうようにしましょう。
冷凍庫で保存する際の注意点
業務用の冷凍庫は約-30℃〜-40℃まで温度を下げられますが、家庭用の冷凍庫は業務用の冷凍庫と違い、設定温度が-18℃に設定されています。
そのため、カニの鮮度と品質を保ったまま冷凍庫で保存することは難しいでしょう。
そこで、冷凍庫の中でなるべく長持ちさせるための保存ポイントはこちらです。
- 扉の開閉を極力しない
- 冷凍庫の奥で保存する
- 冷凍庫内に熱いものを入れない
- 解凍後は乾燥を防ぐためにラップで包む
家庭用の冷凍庫は扉の開閉だけで2℃ほど温度が上昇してしまいます。
そのため、なるべく扉の開閉をせずに保管することが大切です。
ですが、カニの鮮度を保ったまま保存できる期間は限られています。
ですので、なるべく期間を置かずに食べてしまうようにしましょう。
カニが黒くなる現象「黒変」についてのまとめ
今回は、カニを解凍後数時間放置することで起こる黒変について解説してきました。
最後に本記事の内容を振り返ってみましょう。
- カニが黒くなるのは黒変が原因
- ボイルにすると黒変を起こしにくい
- 黒変したカニは食べても人体に害はない
- 黒変を完全に防ぐことはできない
- カニは冷凍室で保存するのが望ましい
カニが黒く変色するのは、黒変が原因でこの現象を完全に防ぐことはできません。
そのため、カニの解凍後はボイルにして保存するか、できることならすぐに食べるようにしましょう。
また、黒変を起こしてもカニ自体の味や風味に影響はありません。
もちろん、人体にも害はないので、そのまま食べてもらっても大丈夫です。
しかし、見た目は少なからず気になるところであると思います。
そのため、カニを食べる際は常温で放置するなど、間違った保管方法をしないように十分気をつけておきましょう。