キンセンガニは、丸みを帯びた甲羅が特徴的な中型のカニです。
日本でも生息が確認されており、海水浴場で見かけることもあります。
しかし、知名度の低いカニであるため、その生態について詳しく知る方は少ないでしょう。
本記事では、そんなキンセンガニの生態や分布について紹介します。
また、食用や飼育用として利用できるのかについても解説しているので、ぜひ最後までご覧ください。
キンセンガニとは
キンセンガニはキンセンガニ科に分類されるカニで、丸みを帯びたドームのような形をした甲羅が特徴です。
甲幅はオスで5〜7センチ、メスで4〜6センチとカニの中では中型に分類されます。
甲羅の左右に側棘が飛び出しており、側棘から目までにノコギリのような歯が六個付いています。
歩行に使用する脚である歩脚はすべてヒレのようになっているため、海の中を上手に泳げるのが特徴です。
キンセンガニの分布
キンセンガニは、インド太平洋の熱帯・亜熱帯の海域に広く分布しています。
日本では、房総半島から小笠原諸島までに見られます。
水深15メートルほどまでの深さに生息しているため、海水浴場で砂に潜ったキンセンガニを踏んづけてしまうこともあるでしょう。
しかし、鋏の力が強く挟まれると出血することもあるため、海辺で見かけても触らないようにしましょう。
キンセンガニの名前の由来
キンセンガニは、見た目だけでなく名前も特徴的なカニです。
そんなキンセンガニの名前の由来は、「金銭ガニ」ということで、甲羅が小銭のように丸いことからつけられたとされています。
一方で、金銭ガニではなく甲羅に金色の線が入っていることから「金線ガニ」と名付けられたとされる説もあるため、正確な由来は定かになっていません。
キンセンガニは食べられる?
キンセンガニは、地域によっては味噌汁などに活用される場合もありますが、基本的に食用としては利用されていません。
まんまるとした見た目は、毒を持つカニ「スベスベマンジュウガニ」と似ていますが、キンセンガニは無毒です。
そのため、海で捕まえたキンセンガニを自宅で調理することができます。
しかし、中の身は少なく味も強くないため、食用としては向いていません。
キンセンガニは飼育できる?
キンセンガニは食用としての利用には向いていませんが、飼育用としては利用できます。
キンセンガニが生息している海辺に行くと、砂に潜っているキンセンガニを見つけられることがあるため、自ら捕獲しての飼育も可能です。
ずんぐりとした甲羅と特徴的な模様は、見た目からも愛着を感じられるでしょう。
キンセンガニのエサは?
キンセンガニは雑食性のため、海藻や小動物など基本的にはなんでも食べます。
そのため、ゴカイやエビ、ザリガニのエサなど用意しやすいエサを与えてあげるとよいでしょう。
また、エサの食べ残しがあると水槽が汚れてしまうため、食べていないエサがあればその都度ピンセットなどで回収することが大切です。
キンセンガニの飼育環境は?
キンセンガニを飼育する際は、水槽の水温が28℃を超えないようにしなければいけません。
そのため、水温が高くなりやすい夏場はクーラーをつけて水温を調節することが大切です。
また、キンセンガニは熱帯・亜熱帯に生息するカニであるため、水温の下限は15℃程度と、寒さにもデリケートです。
冬場もヒーターをつけるなどして、水温が下がりすぎないように注意しましょう。
混泳は可能?
キンセンガニは、ほかのカニや魚と混泳すると襲われてしまう危険性があるため、混泳は避けましょう。
また、混泳しているとキンセンガニに十分なエサが行き渡らない可能性もあります。
そのため、キンセンガニの安全を考慮するなら、なるべく単体で飼育するようにしましょう。
キンセンガニの近縁種
キンセンガニの代表的な近縁種は「アミメキンセンガニ」や「コモンガニ」が挙げられます。
それぞれの近縁種の特徴について見ていきましょう。
アミメキンセンガニ
アミメキンセンガニは、紫色の網目模様が特徴のキンセンガニです。
甲幅は4センチ程度で、遊泳や砂に潜って生活しています。
最近では河口部干潟の埋め立てにより、その個体数を減らしており、絶滅危惧種にも認定されている希少なカニです。
コモンガニ
コモンガニはカラッパ科に属するカニで、甲幅は4センチ程度です。
丸く平たい甲羅をしており、キンセンガニと見た目は大きく異なりません。
また、日本では琉球諸島でしか見られないのが特徴です。
キンセンガニの偽物?コツノキンセンモドキとは
キンセンガニの偽物のような名前をしているコツノキンセンモドキですが、その名のとおりキンセンガニに似ていることが由来となっています。
甲幅は6センチ程度で、食用としての利用は多くありません。
しかし、現地では味噌汁として食べられることもあります。
カラッパの仲間ではありますが、一般的なカラッパよりも腕が細いのが特徴です。
キンセンガニと似ているカラッパとは?
カラッパとは、カラッパ科のカニの総称です。
太平洋から太平洋沿岸にかけて広く分布しており、甲長が10センチにも及ぶ大きな個体も存在しています。
キンセンガニと同様に丸みを帯びた甲羅が特徴です。
脚で甲羅を隠して擬態するような変わった習性を持つことでも知られています。
関連記事:カラッパとはどんなカニ?飼育に大切なポイントや特徴について解説!
トラフカラッパ
トラフカラッパは、鋏脚に虎斑(とらふ)模様がついていることからその名がつけられました。
日本では東京湾から九州にかけて生息しています。
甲幅は10センチを超える大型で、産地では食用として利用されることもありますが、産地以外では流通していません。
メガネカラッパ
特徴的な名前のメガネカラッパは、甲羅の上の部分がメガネに見えることが名前の由来です。
甲幅は6センチ程度で東京湾以南の浅い砂泥地に生息しています。
基本的に、食用として利用されることはありません。
ヤマトカラッパ
ヤマトカラッパは、ぶつぶつとしたマダラ模様が特徴のカニです。
甲幅は9センチ程度のやや大型で、まんじゅうのように下が膨れた形をしています。
食用として利用されることはありませんが、特徴的な見た目から観賞用として飼育されることがあります。
ソデカラッパ
ソデカラッパは、甲幅が8センチ程度で丸みを帯びた見た目が特徴的なカニです。
鋏脚と甲羅を密着させることで身を守っています。
可愛らしい見た目から、飼育用としても高い人気があります。
キンセンガニに似ているコブシガニとは?
コブシガニとは、コブシガニ科に属するカニです。
甲幅は3センチほどで大きくはありませんが、その名のとおり拳のように屈強な鋏脚が特徴で、キンセンガニのように丸みを帯びた甲羅をしています。
食用としては利用されていません。
マメコブシガニ
マメコブシガニは、コブシガニ科に分類されるカニです。
甲幅が2センチ程度の小型で、屈強な鋏脚に対して細くて短い歩脚が特徴です。
甲羅は丸みを帯びており、背面は盛り上がっています。
日本では、岩手県から南の九州、奄美大島までに生息が確認されています。
オオテナガコブシガニ
オオテナガコブシガニは、細長い鋏脚と歩脚が特徴のカニです。
特にオスのオオテナガコブシガニなら、鋏脚が甲長の2倍ほどの大きさになります。
アメリカのマサチューセッツ州沖からメキシコ湾東部などに分布しています。
海辺で見つけられるカニはどんな種類がいる?
キンセンガニは、場所によっては海水浴中に遭遇できるカニです。
そんな、海辺で見つけられるカニにはどんな種類がいるのでしょうか。
確認していきましょう。
スナガニ
スナガニはスナガニ科に分類されるカニで、東アジアの砂浜海岸に生息しています。
甲幅は3センチ程度で、甲羅は長方形です。
砂浜に掘った数十センチの深い穴を棲み家にします。
そのため、砂浜で深い穴を見つけたら、中にスナガニが入っている可能性があるでしょう。
逃げ足は素早いため、砂浜を走っているスナガニを捕獲するのは容易ではありませんが、捕まえたら自宅での飼育も可能です。
イソガニ
海の岩場やテトラポッドでよく見かけるカニは、東南アジアの熱帯域などに生息しているイソガニです。
イソガニはその名前のとおり、磯場に生息しているため、海に出向いた際には遭遇する機会も多いでしょう。
そんなイソガニは食用としても利用されており、主に味噌汁や素揚げなどで食べられます。
また、どこにでもいる手軽さから自ら捕獲して、自宅で飼育することも可能です。
イワガニ
イワガニはイワガニ科に分類されるカニで、日本では北海道以南の岩礁海岸に生息しています。
甲幅は3.5センチほどで、それほど大きくありません。
普段は波打ち際の岩場を走り回っており、海に入ることは少ないですが、敵が近づくと海にダイブすることもあります。
エサは、海岸にいるフナムシや小魚、死んだ魚介類などを好んで食べます。
食用としても利用されており、イソガニを出汁とした味噌汁に利用されるのが一般的です。
イソクズガニ
イソクズガニは、西日本の海辺に生息している甲幅3センチ程度のカニです。
体に海藻をつけて周りと擬態する変わった習性を持っています。
海外にある潮溜まりに隠れていることが多く、自ら捕獲しての飼育も可能です。
食性は雑食で、パンくずやほかの魚のエサなどなんでも食べます。
体も大きくないため、飼育に向いているカニといえるでしょう。
キンセンガニについてのまとめ
今回は、独特な名前を持ったキンセンガニについて紹介しました。
キンセンガニは日本の海水浴場でも見られるカニで、食用として利用されることはあまりありません。
一方で、観賞用として飼育されることはあり、海で捕まえたキンセンガニをそのまま自宅で飼うことも可能です。
しかし、鋏で挟む力は強いため、海で見つけたからといって、気軽には触らないようにしましょう。