カニには、はさみや脚を自ら切り落とす「自切」という習性があることで知られています。
この自切は、自然界だけで起こる現象ではありません。
調理中に自切が起こってしまうと、カニの旨味が抜けてしまうため、事前の対策が必要です。
そこで本記事では、カニが自切する理由と、調理中に自切を起こさないための対策について紹介します。
活きたカニを調理する方は、ぜひ本記事の内容を参考にしてみてください。
カニが自切をする理由
カニが自切を起こすのは、防衛本能が働いたときです。
例えば、トカゲは自ら切り落とすことで敵から逃げる時間を稼ぐ「尻尾切り」と呼ばれる習性が有名です。
カニも同様で、カニがほかの天敵に狙われるなど命の危機が及んだ際は、自らのはさみや脚を切り離して自切を行います。
このように、自切はカニの生命を守るための防御策であり、カニが危険から逃れるための戦略として進化した習性といえるでしょう。
自切した脚は生えてくる
カニが命を守るために自切を行ったとしても、はさみや脚を失った状態ではその後の生命維持に大きな影響を与えてしまいます。
しかし、人間と異なり、カニははさみや脚を失ったとしても再生されるのが特徴です。
自切した後の関節部分には薄い膜ができ、その中に小さな脚が再生されます。
その後、脱皮を行うことで再生された脚が出てきて元通りになります。
自切した脚は永遠に再生はできない
自切されたはさみや脚は、脱皮によって再生されますが、永遠に再生できるわけではありません。
というのも、カニが生きているうちに脱皮できる回数は決まっているためです。
特に、大人になるにつれて脱皮の頻度も段々と落ちていきます。
そのため、最後の脱皮を迎えた後に自切が行われると、その後は失われたはさみや脚の再生は行われません。
カニの脚が足りないのは自切によるものも多い
販売されているカニの中には、訳アリ品として脚が足りないカニが売られていることがあります。
これは、水揚げの際に網に引っかかって取れてしまったものもありますが、自切によって失っているものも少なくありません。
ちなみに、自切によって脚のないカニでも美味しさは変わらないため、カニを安価で購入したい方は、脚が足りない訳アリ品を購入してみるのもおすすめです。
カニが自切するのを防ぐ方法
活きたカニを調理する際に、カニをそのまま茹でると自切によって鍋の中で脚がばらばらに外れてしまいます。
調理中に脚が外れてしまうと、そこから貴重な旨み成分が流れ出てしまうため、事前に自切が起こらないように対策をしておく必要があります。
カニが自切を起こすのは、生命に危機を感じたときです。
そのため、カニを調理する際は事前に絶命させておけば自切は起こりません。
絶命させる手順として、まずは氷水にカニをつけて失神させます。
失神したら、口の間からアイスピックなどの鋭利なものをぐりぐりと差し込んで、神経を破壊します。
そうすることでカニは絶命するので、加熱調理しても自切を引き起こすことはありません。
飼育下でも自切することがある
カニをペットとして飼育していると、水槽の中で自切によって取れてしまったはさみや脚が落ちていることがあります。
これは、水槽の中に天敵がいなくても、ストレスを感じることで自切を起こす可能性があるためです。
そのため、飼育下で自切が起こったら飼育環境の見直しが必要です。
特に水質が汚染されていたり、水温が適温でなかったりするとカニには強いストレスがかかります。
カニにとってなにがストレスだったのかを検証して、今後は自切が起こらないように飼育環境を整えるようにこころがけましょう。
カニの調理で自切以外に気を付けること
カニを調理するうえで、自切を防ぐことはカニの旨みを逃がさないためにも大切です。
続いては、カニの調理で自切以外に気を付けることについて確認していきましょう。
甲羅をしっかり洗う
カニは、調理前に甲羅をしっかり洗うことが大切です。
これは、カニに付着した腸炎ビブリオと呼ばれる菌を洗い流すためで、洗わずに調理してしまうと食中毒を引き起こしてしまう可能性があります。
甲羅を洗う際は、たわしなどでしっかり洗いましょう。
また、脚のつけ根部分は洗い残しが起こりやすいため、入念に洗うことが大切です。
食中毒になると、激しい腹痛や発熱に見舞われる可能性があるため、衛生管理はしっかり行いましょう。
しっかり加熱する
カニによる食中毒にならないためには、しっかり加熱することが大切です。
しっかり加熱することで、カニに付着している細菌を死滅できます。
しかし、加熱を行っても食中毒を完全に防ぐことはできないため、保存を適切な方法で行うなど、そのほかの衛生管理もしっかり行うようにしましょう。
適切な方法で解凍する
冷凍されているカニは、適切な方法で解凍しないと本来の旨みを損なってしまいます。
具体的にNGな解凍方法は、急速な解凍です。
電子レンジを使って一気に解凍したり、常温で放置したりして解凍する方法は、カニの温度変化が激しくなるため、不適切です。
そのような解凍方法をしてしまうと、身がパサパサしたり、旨みが低下したりします。
そのため、冷凍のカニを解凍する際は、流水や氷水でじっくり解凍することが大切です。
カニを美味しく食べるためにも、解凍から気を配って行うようにしましょう。
適切な方法で保存する
カニは、状態によって保存方法が異なります。
状態ごとの保存方法は、以下の表のとおりです。
状態 | 保存方法 | 保存期間 |
---|---|---|
生ガニ | 茹でてから冷蔵庫で保存する | 2〜3日程度 |
茹でガニ | ラップで2~3重にしてビニール袋に入れて保存する (冷蔵庫なら2日間、冷凍庫なら3日間程度) |
2日間(冷蔵庫) 3日間(冷凍庫) |
冷凍ガニ | ラップや新聞紙で2~3重にしてビニール袋に入れて保存する | 2~3週間程度(冷凍庫) |
カニは、日持ちがしにくい食材です。
日にちが経つにつれて食感や旨味が損なわれるため、なるべく早く消費するようにしましょう。
カニの飼育で自切以外に気を付けること
カニを飼育するうえで気を付けなければいけないのは、自切だけではありません。
続いて、カニの飼育で自切以外に気を付けなければいけないことについて確認していきましょう。
水質管理
カニを飼育するうえで、カニの種類に合った水質を用意することはとても大切です。
水質が悪いとカニはストレスを溜めてしまい、自切を起こしてしまう可能性があります。
そのため、定期的に水替えをするなどして水質の維持を徹底するようにしましょう。
また、海に生息するカニには海水を用意しなければいけません。
しかし、毎回海水を汲みに行くのも手間がかかります。
そのため、市販されている海水の素など使用するとよいでしょう。
脱走
カニが脱走すると酸欠を起こして、泡を吹いて死んでしまう可能性があります。
そのため、カニが水槽から出られないように対策を取ることが大切です。
カニの脱走対策として有効なのが、頑丈な蓋を付けることです。
しかし、ただ蓋を付けるだけだと、はさみでこじ開けて脱走してしまう可能性があるため、蓋の上に重しを置いておくとよいでしょう。
また、飼育環境が悪いとカニがより良い環境を求めて脱走を試みることがあるため、飼育環境をしっかり整えることも大切です。
エサ
カニを飼育するうえで、エサは必要な分だけ与えることが大切です。
必要以上にあげてしまうと、食べ残しからくる水質汚染を誘発してしまいます。
そのため、エサは過剰にあげすぎないようにして、食べ残しが発生したらピンセットなどで取り除くようにしましょう。
そうすることで、水替えの頻度も少なくなるため、飼育にかかる手間を抑えられます。
脱皮不全
カニは、一年に数回脱皮をする習性を持っており、脱皮をすることによって、体のサイズを大きく成長させています。
しかし、脱皮には多くのエネルギーを使うため、すでに弱っている状態で脱皮が始まると体力が足りずに死んでしまうケースも珍しくありません。
ほかにも、脱皮時に体が引っかかるなどして、はさみや脚など体の一部を失ってしまうケースも考えられます。
そのため、カニにストレスを与えて弱らせないためにも、飼育環境を整えてあげることが大切です。
呼吸困難
カニは、エラ呼吸をする生物であるため、陸地で長いこと生活していると呼吸困難に陥って死んでしまう可能性があります。
そのため、カニを飼育する際は、しっかりと水辺の環境を整えてあげなければいけません。
また、飼育水が多すぎるのもよくありません。
飼育水が多く、水位が高いと水中に含まれている酸素の量である溶存酸素量が薄くなってしまいます。
そのため、水をたくさん用意すればいいというものでもない点に注意が必要です。
さらに、溶存酸素量は水温によっても変化するため、カニの種類に合わせた適温の維持を心がけましょう。
関連記事:魅力満点!初心者でも簡単に始められるカニの飼育方法と注意点
カニの自切についてのまとめ
今回は、カニの自切について紹介しました。
自切は、カニが身の危険を感じた際に行う防衛本能で、自らのはさみや脚を切り落とす行為を指します。
自切した脚は、次の脱皮で再生されるため、もう生えてこないということはありません。
しかし、カニが脱皮できる回数は限られているため、最後の脱皮を終えてしまっていたら再生できません。
また、自切は自然環境だけの現象ではなく、実際の調理時にも起こる可能性があります。
そのため、カニを調理する前は事前に絶命させる必要がある点に注意が必要です。
さらに、飼育環境でも自切が起こる可能性があるため、カニにはこういう習性があるということを把握しておくとよいでしょう。