海底に並ぶ珊瑚を注意深く観察すると、枝の隙間に小さなカニが暮らしている場合があります。
その正体はサンゴガニといって、珊瑚と共生する珍しい習性を持つカニです。
本記事では、そんなサンゴガニの特徴について紹介します。
複数存在するサンゴガニの種類についてもそれぞれ紹介しているので、ぜひ、その珍しい生態について確認していきましょう。
珊瑚と共生する「サンゴガニ」とは
サンゴガニとはサンゴガニ科のカニで、ハナヤサイサンゴやミドリイシなどの珊瑚の内側に棲んでいます。
甲幅は1.5センチほどで鮮やかな橙赤色をしていることが多いですが、個体によっては紫青色をしていることもあります。
甲羅は平たく、ハサミは左右で大きさが異なるのが特徴です。
太平洋やインド洋に広く分布しています。
サンゴガニが珊瑚に棲むのは、敵から身を守るためと珊瑚からエサを貰うためです。
サンゴガニは珊瑚から出る透明な粘液をエサとしており、脚の先についた硬い毛で粘液を絡みとって捕食します。
また、珊瑚が外敵に狙われた際は、サンゴガニが代わりに追い払うため、珊瑚にもサンゴガニが生息するメリットがあります。
このように、珊瑚とサンゴガニはお互いにとって害がないため、共生関係を持って生活しているといえるでしょう。
さまざまな種類のサンゴガニを紹介!
サンゴガニにはさまざまな種類が存在しており、それぞれが違った特徴を持ちます。
続いては、さまざまな種類のサンゴガニの特徴について確認していきましょう。
ヒメサンゴガニ
ヒメサンゴガニは、ヒメサンゴガニ科に分類される小型のカニです。
甲幅は1センチ程度で、体色は白みが強く、顔には青色が入っているのが特徴です。
また、ハサミの大きさは左右で異なります。
クロサンゴガニ
クロサンゴガニは、甲幅1.5センチ程度のカニで、その名のとおり真っ黒な体色が特徴です。
手足の先は少し色が薄いため、遠目から見る際は手足を見ればその存在を確認できます。
暗い場所では見つけられにくいですが、白い珊瑚の中にいると比較的目立つ色合いです。
クロエリサンゴガニ
クロエリサンゴガニは、ヒメサンゴガニ科に分類されるカニで、インド西太平洋に広く分布しています。
甲幅は1センチ程度の小さなカニで、歩脚の前節の先に黒褐色の斑点があるのが特徴です。
体色は乳白色で、額の前縁などは黒色で縁取られています。
オオアカホシサンゴガニ
オオアカホシサンゴガニは、サンゴガニ科に分類される甲幅2センチ程度のカニです。
小笠原諸島や奄美大島以南に生息しています。
白色の体色に赤色のマダラ模様が全身を覆っています。
眼は黄緑色で、縦長の甲羅が特徴です。
アカホシサンゴガニ
アカホシサンゴガニは、甲幅が1〜1.5センチ程度のカニで、オオアカホシサンゴガニよりも若干サイズが小さい種になります。
オオアカホシサンゴガニと体の特徴に大きな違いはありませんが、目の色が黄緑色ではなく、体色と同色であることで見分けが可能です。
アミメサンゴガニ
アミメサンゴガニは、サンゴガニ科に分類されるカニです。
主にミドリイシ類やハナヤサイサンゴ類を住処にしており、相模湾以南の西部太平洋・インド洋、ハワイに分布しています。
甲幅は3センチ程度で、体は赤橙色、甲羅やハサミは赤褐色の網目模様がついているのが特徴です。
シンカイサンゴガニ
シンカイサンゴガニは深海に生息するサンゴガニで、沖縄の美ら海水族館が発見した新種です。
乳白色の体色と太いハサミ脚、六角形の甲羅が特徴です。
また、各脚が半透明で、甲羅の前半部に黄色い帯状の模様が入ります。
ホシベニサンゴガニ
ホシベニサンゴガニは、サンゴガニ科の一種です。
日本では、伊豆諸島や紀伊半島以南の太平洋側に生息しています。
体は茶褐色をしており、甲羅には三日月型の斑紋が見られます。
脚の長節基部と前節の末端はピンク色で、眼とハサミ脚は赤褐色です。
サンゴガニは飼育できる?
サンゴガニは、自宅で飼育できます。
小柄で可愛らしい見た目をしているのはもちろん、種類が豊富で見た目のバリエーションが多いため、飼育の楽しみも多いでしょう。
珊瑚の粘液をエサにするため、エサを用意する必要がなく、飼育コストがあまりかからないのも特徴です。
しかし、サンゴガニが棲めるハナヤサイサンゴやミドリイシなどの珊瑚が飼育できる環境でなければいけません。
そのため、すでに珊瑚を飼育している方におすすめです。
ぜひ、珊瑚と一緒にサンゴガニも飼育してみてはいかがでしょうか。
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サンゴガニのように変わった習性や見た目を持つカニを紹介!
カニは世界で7,000種類いるといわれており、中には変わった習性を持つカニも多く存在しています。
続いては、サンゴガニのように変わった習性や見た目を持つカニをいくつか紹介していきます。
カラッパ
カラッパとは、カラッパ科カラッパ属に分類されるカニの総称です。
5〜15センチ程度の甲幅を持ち、その大きさは種類によってまちまちです。
また、甲羅はドーム状で丸みを帯びた特徴的な見た目をしています。
日本産のカラッパ類は11種類確認されており、個体としては虎斑模様のトラフカラッパや、目の周りが眼鏡のように縁取られたメガネカラッパが多く生息しています。
関連記事:カラッパとはどんなカニ?飼育に大切なポイントや特徴について解説!
スベスベマンジュウガニ
スベスベマンジュウガニはオウギガニ科に分類されるカニで、毒を持つ有毒ガニとして知られています。
甲羅はドーム状で、名前のとおり表面は滑らかです。
日本では、千葉県から沖縄県にかけて生息しています。
体表部や歩脚、ハサミ脚の筋肉に毒を含んでおり、間違って食べてしまうと死に至るとされています。
そのため、釣りで釣れてしまっても持ち帰って食べないように注意しましょう。
関連記事:食べると危険!毒のあるカニ「スベスベマンジュウガニ」について紹介
タカアシガニ
タカアシガニは、クモガニ科に分類される大型のカニです。
現生する節足動物の中では世界最大で、「生きた化石」と呼ばれるほど種が古いことも特徴です。
脚は細長く、ハサミを広げると3.8メートルにまで達します。
甲幅に関しても世界最大規模の40センチ程度です。
また、重さも19キロほどあり、ずっしりとした重みを感じられます。
日本では太平洋岸の岩手県から九州にかけて生息しており、食用として親しまれています。
大味な味は好みが分かれるかもしれませんが、身は瑞々しくてジューシーです。
食べられる機会は少ないかもしれませんが、一度は食べてみたいカニといえるでしょう。
関連記事:タカアシガニの味は美味しい?値段や旬の時期についても解説!
ケブカガニ
ケブカガニは、相模湾から鹿児島県、九州の北部・西部に生息するケブカガニ科に分類されるカニです。
その名のとおり、全身に大量の長い毛が生えており、毛深いのが最大の特徴です。
同じく毛が生えているカニに毛ガニがいますが、毛ガニとは分類群が異なります。
また、ケブカガニには毒性を持つ可能性を指摘されているため、食用としては利用できません。
そのため、利用は鑑賞目的に限定するようにしましょう。
カイカムリ
カイカムリは、カイカムリ科に分類されるカニの一種で、インド洋や太平洋に分布します。
甲幅は10センチ程度で、ほかのカイカムリ科のカニと比較すると大型です。
また、全身に短い毛が生えていることと、第4、第5脚は短いことが特徴です。
小さな第4、第5脚を使って貝殻やサンゴなどを背負って自分の身を隠す変わった習性を持っています。
この変わった習性から、貝被=カイカムリと呼ばれるようになりました。
タスマニアオオガニ
タスマニアオオガニは、オーストラリア南西部とタスマニア島近辺の海域に生息する食用ガニです。
甲幅が最大で46センチにまで成長し、甲幅に関しては世界最大の節足動物と呼ばれるタカアシガニよりも大型です。
さらに、ハサミは左右で大きさが異なり、節足動物のハサミでは最大級の大きさを誇ります。
大きな体に詰まった身は食べ応え抜群で、甘みと旨みが強いのも特徴です。
また、蟹味噌も濃厚なため、身と合わせることでより美味しくいただけるでしょう。
関連記事:世界最大規模のカニ「タスマニアオオガニ」とは?特徴や味について紹介!
アサヒガニ
アサヒガニは、インド太平洋の温暖な海域に生息する大型のカニです。
縦に長く、前屈したような特徴のある見た目から、英語ではフロッグクラブと称されています。
主に食用として利用され、塩茹でや鍋料理で楽しまれています。
また、蟹味噌も美味しいため、身と合わせて食べるとアサヒガニの魅力をより感じられるでしょう。
関連記事:エビに似たカニ「アサヒガニ」の特徴や味は?どんな料理がおすすめ?
キンチャクガニ
キンチャクガニは、インド太平洋の熱帯地域に見られる小型のカニです。
両方のハサミにイソギンチャクをつけているのが最大の特徴で、その見た目からポンポンクラブやボクサークラブという愛称でも知られています。
イソギンチャクを持ち運ぶのは外敵から身を守るためで、イソギンチャクの触手を使って威嚇します。
その可愛い習性から飼育用のカニとしても人気です。
通販からでも購入できるので、ぜひ観賞用として飼ってみてはいかがでしょうか。
関連記事:キンチャクガニの飼育方法は?エサや適切な水温について解説!
マメガニダマシ
マメガニダマシは、小さい個体だと甲幅3ミリを下回る世界最小規模のカニです。
ハサミを広げても1センチほどで、日本近海やオホーツク海沿岸などに生息しています。
サンゴガニの特徴についてのまとめ
今回は、サンゴガニの特徴について紹介しました。
サンゴガニは、ハナヤサイサンゴやミドリイシなどの珊瑚の内側に棲む珍しい習性を持つカニです。
敵から身を守るためとエサを貰うために珊瑚に棲みつきますが、その代わりに珊瑚の天敵を追い払う役目を担っています。
そのため、珊瑚とサンゴガニは共生の関係にあります。
また、サンゴガニにはたくさんの種類が存在しており、それぞれで見た目が異なるのが特徴です。
飼育もできるので、ぜひ珊瑚と一緒にお家で飼ってみてはいかがでしょうか。