体の機能を一部停止して寒い冬に備える冬眠は、熊やリスなど一部の哺乳類で見られる生態です。
そんな冬眠は、甲殻類であるカニも行う習性があることをご存じでしょうか。
実際、カニが冬眠するイメージを持つ方は多くないでしょう。
本記事では、カニが冬眠する理由や、飼育下で冬眠を成功させる方法について紹介します。
カニをペットとして飼っている方は、冬眠の知識はカニを長生きさせるために必要となるので、ぜひ参考にしてみてください。
カニが冬眠をする理由
自然界に生きる多くの動物は、冬になるとエサの入手が難しくなります。
そのため、カニに限らず冬眠の習性がある動物は飢えを凌ぐために冬眠します。
冬眠によって体の活動を抑えることで、消費するエネルギーを最小限にでき、厳しい冬を乗り越えられるというわけです。
また、長い冬を乗り越えるために、冬眠前はたくさんのエサを食べてエネルギーを貯蓄します。
この貯蓄したエネルギーを冬眠中は利用するため、冬眠が始まったら飲み食いしないのが特徴です。
このように、冬眠はカニが厳しい冬を乗り越えるための賢い習性といえるでしょう。
冬眠に失敗したらどうなる?
冬眠には、リスクがないわけではありません。
冬眠中にエネルギーが足りずに、そのまま死んでしまうケースもあります。
そのため、飼育下で冬眠させる場合は、冬眠前にたくさんのエサを与えて冬眠に備える環境を作ってあげることが大切です。
また、自然環境では外敵に襲われないように土の中や石の下に身を隠して冬眠します。
死んでいるか冬眠しているかを見分ける方法
カニが冬眠すると動かなくなるため、冬眠しているのか死んでいるのかの判断が難しくなります。
そんなときは、カニを裏返したときの足の動きで確認できます。
左右の足が対照的に縮むと生きていますが、持ち上げた際に足がだらんとなってしまう場合は、死んでしまっている可能性が高いでしょう。
また、カニの周りの水が濁っているようなら死んでいる可能性が高く、対して水が透明で綺麗であれば冬眠である可能性が高いです。
さらに、死んでしまうと異臭がするため、臭いでも生きているか死んでいるかの判断ができます。
カニは何度から冬眠する?
カニが冬眠する条件は気温です。
カニの種類や棲んでいる環境によって、多少の差はありますが、基本的には気温が7度を下回ると冬眠するといわれています。
そのため、冬でも気温の高い地域では冬眠することはありません。
また、水温が下がることでも冬眠する可能性があるため、冬眠させたくない場合はヒーターを利用した水温の管理が大切です。
海のカニは冬眠しない
基本的に、海のカニが冬眠することはありません。
これは、海は温度が安定しているため、冬眠の必要がないためです。
そのため、海のカニの代表格である毛ガニやタラバガニ、ズワイガニなどは冬でも活きた新鮮な状態で水揚げされます。
一方で、川のカニは温度変化を受けやすい環境にいるため、一部の種類のカニは冬眠を行います。
冬眠をするカニの種類
冬眠といっても、すべてのカニが冬眠するわけではありません。
続いては、冬眠する習性の持つカニを7種紹介します。
それぞれのカニの特徴について見ていきましょう。
サワガニ
サワガニは、日本各地の淡水に生息する小型のカニです。
水の綺麗な川や沢に生息しています。
そんなサワガニも、寒くなると冬眠するカニの一種です。
飼育でもよく利用されるサワガニですが、飼育下で冬眠させるためには深めの土や身を隠せる石を用意してあげるようにしましょう。
また、室温は低くなりすぎないように注意が必要です。
冬眠が確認されたら、なるべく刺激しないように暖かくなるまで見守りましょう。
アカテガニ
アカテガニは、ベンケイガニ科に分類されるカニの一種です。
名前のとおり赤い手をしています。
寒い時期になると、自ら掘った穴に潜って冬眠をします。
そのため、飼育下でアカテガニを冬眠させるなら、体が隠れるほどの深い土が必要です。
土を用意できない場合は、体を隠せるほどの石でも代替できます。
また、冬眠中に死んでしまわないために、室温が下がりすぎないように調整することも大切です。
ベンケイガニ
ベンケイガニは、武蔵坊弁慶からその名が付けられたカニで、甲羅がゴツゴツしているのが特徴です。
インド太平洋沿岸の熱帯や温帯地域に生息しています。
冬眠の時期が近づくと食べるエサの量が減るため、予兆を見逃さないようにしましょう。
アシハラガニ
アシハラガニは、モクズガニ科に分類されるカニの一種です。
主に東アジアの干潟に生息しており、佐賀県有明海沿岸地域ではシオガニという地方名でも知られています。
泥に40センチほどの深い巣穴を掘って生活していますが、冬眠時もその巣穴を利用します。
飼育環境は5度以下にならないように注意しましょう。
モクズガニ
モクズガニは、中国で人気の高い食用カニである上海ガニと同族異種のカニです。
甲幅は7〜8センチで川に生息するカニの中では、大型種です。
主に食用として親しまれており、特に濃厚でクリーミーな蟹味噌は高い評価を誇ります。
そんなモクズガニも冬になると活動が弱まり、エサを食べずにじっとするようになります。
モクズガニはほかのカニと比較しても大型で飼育難易度は高いですが、飼育する際は冬眠の時期を意識して観察するようにしましょう。
オサガニ
オサガニはスナガニ科に分類されるカニの一種で、東京湾以南や朝鮮半島など幅広く分布しています。
甲幅は5センチほどになる大型種で、長い眼が特徴です。
砂泥底の干潟に穴を掘って生活していますが、寒くなるとその巣穴の中で冬眠します。
そのため、暖かくなると巣穴から出て活動を再開します。
イソガニ
イソガニは、モクズガニ科に分類されるカニで、西太平洋の熱帯から亜寒帯地域にまで分布しています。
大きい個体だと甲幅が4センチ近くにもなる、威圧感のある見た目が特徴です。
寒くなるとエサを食べにくくなり、活動力が低下します。
しかし、冬眠中でも暖かくなると動き出すため、完全な冬眠とはいえないでしょう。
それでも寒い時期はとても繊細です。
そのため、イソガニの活動の低下が見られたら、室温や水温を整えて余計な刺激をしないようにしましょう。
カニは冬眠させた方がいい?
自然環境では、冬になるとエサが減って生き延びるのが難しくなるため、厳しい冬を乗り越えるために冬眠は効果的です。
しかし、飼育下では冬でもエサが減ることはなく、冬眠しなくても十分生きていけます。
加えて、冬眠による餓死や衰弱死を防げるため、冬眠させない方が安全に飼育できます。
そのため、飼育下ではカニを冬眠させないように管理することも一つの選択肢となるでしょう。
カニを冬眠させない方法
カニを冬眠させないためには、水槽内の温度を適切に管理する必要があります。
まず、冬眠に入る温度にならないように、水槽にヒーターを取り付けましょう。
ヒーターは、水温を一定に保つのに役立ちます。
寒い冬はヒーターを稼働して、水温を15〜25度に保つように注意しましょう。
また、室温も下がりすぎないように注意が必要です。
適切な水温と室温を維持することで、カニが冬眠に入るのを防ぎ、活発な活動を促進できます。
冬眠を成功させる方法
カニの冬眠を成功させるためには、冬眠に最適な場所を作る必要があります。
そのためには、カニの体が埋もれるほどの土や砂をを用意しましょう。
深い土や砂を用意できない場合は、石を入れてあげるのも効果的です。
カニは、土の中や石の隙間に入り込んで冬眠します。
そのため、土や石を提供することで、カニは安心して冬眠に入れます。
冬季にカニを室内で飼育する場合は、このような環境を用意してあげるようにしましょう。
関連記事:魅力満点!初心者でも簡単に始められるカニの飼育方法と注意点
冬眠から目が覚めるのは春
カニの冬眠は寒い季節に行われるため、寒くなってきた11月頃にカニは冬眠の準備を始めます。
そして、暖かくなってきた春頃に目を覚まします。
具体的な時期としては、5月頃が一般的です。
そのため、環境によっては半年ほど冬眠することもあるでしょう。
カニの寿命は?
カニの寿命は種類によって異なりますが、飼育用として人気の高いサワガニの寿命は10年程度です。
海に生息する大型のカニである毛ガニやタラバガニは15年近く生きるとされるため、川のカニの方が短命の傾向にあります。
生きている間は、何度も冬眠をして冬越えをします。
そのため、しっかりと冬眠に備えて生き延びた個体だけが寿命を全うできます。
カニは暑さに強い?
カニは気温や水温が低すぎる場合、環境についていけずに死んでしまいます。
一方で、気温や水温が高すぎる場合も、死んでしまうため注意が必要です。
夏場はクーラーや冷却装置を取り付けて、温度が上がりすぎないようにしなければいけません。
サワガニは、28度が適温といわれているので、一年を通して温度は一定に保つようにしましょう。
カニが冬眠する理由や冬眠を成功させるための方法についてのまとめ
今回は、カニが冬眠する理由や冬眠を成功させるための方法について紹介しました。
カニの冬眠についてあまりイメージがないかもしれませんが、カニは熊やリスのように冬眠する生態を持っています。
冬眠はエサの少ない冬場を乗り越えるために重要な生態です。
しかし、カニの冬眠にはリスクが伴うのも事実です。
そのため、飼育下での冬眠は細心の注意を払う必要があります。
水槽の中にカニが潜れるほどの土や砂を用意し、カニが安心して冬眠できる環境を整えてあげましょう。
また、冬眠は必ずしも必要ではないため、温度を一定に保って冬眠させないように調節するのも一つの選択肢です。
冬眠させるにしてもさせないにしても、正しい知識を持って飼育に臨むようにしましょう。